経営者の方であれば、労働者を会社に雇入れしその後就労を継続していく際には、労働基準法、労働契約法等どちらかというと労働者を保護する要素の強い労働法規を順守していく必要があります。雇入れの際には、使用者と労働者の間で労働契約を結びますが、この際、労働基準法、労働契約法、パートタイム労働法等を根拠に、書面で分かり易く労働者に一定の労働条件を説明・明示する必要があります。
本来、厳密にいえば契約そのものについては書面で行わなくとも直ちに違法とまではならないのですが、これらの法律によって実質的に書面で契約を交わす必要が生じます。この入社の際に交わす労働条件に関する書類は、一般的には「労働契約書」「労働条件通知書」「雇用契約書」「雇入通知書」など会社によって呼称は様々ですが、求められる要件については全て同じになります。
加えて、これらの書面で明示が必要とされている事項以外にも、経営者には労働者が職場で就労するにあたっての安全に配慮する義務「安全配慮義務」というものが課されています。
具体的には、労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)により「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されており、労働契約における使用者の安全配慮義務が明文化されています。
実質的に労働者の健康被害を未然に防ぐ措置としては、労働安全衛生法第66条第1項により雇入れ時(労働安全衛生規則第43条)と年1回(労働安全衛生規則第44条)の健康診断を実施する義務が会社にはあります。また見落とされがちですが、給食業務を行う労働者の場合には健康診断の際に検便も義務付けられています(労働安全衛生規則第47条)。
その他、2015年10月からは常時使用する労働者が50人以上の企業には、心理的な負担の程度を把握するための検査「通称:ストレスチェック」の実施が義務付けられています(労働安全衛生法第66条の10)。 なお、50人未満の会社に対しては、当面の間ストレスチェックの実施については努力義務となっています(附則第4条)。
そして、健康被害は一定以上の労働時間を超えると精神疾患を中心に発生率が高まるため、2019年4月から新たに、会社に対して労働者の労働時間を厚生労働省令で定める適切な方法で把握する義務が課されています(労働安全衛生法第66条の8の3及び労働安全衛生規則第52条の7の3)。