日本では、一部の個人事業を除き法人組織で会社を運営している事業所であれば、社会保険に加入しなければなりません。そして、社会保険に加入している事業主の方であれば、年金事務所という行政機関にお世話になる機会も多いかと思います。

1年間を通して会社が年金事務所とかかわるケースを見てみると、従業員の入退社時にともなう健康保険、厚生年金保険への加入・喪失手続き、賞与支給時の報告、算定基礎届などが一般的かと思います。左記の会社の定期事務の他には、傷病手当金や高額療養費の申請等どちらかというと従業員個人の保険請求に係ることでお世話になることもあります。

実はこれ以外にも、年金事務所による行政調査という会社にとっては重要なものがあることをご存知でない方もいらっしゃるようです。
年金事務所の調査というと、税務署の調査ほどその内容が知れ渡っていないこともあり、あまり馴染みのない経営者の方も多いようです。
税務署の調査のように調査後に税金を払ったりするケースがある訳ではなく、大したことはないだろうと考えている経営者の方も多いようですが、甘くみていると大変な思いをするケースもあるので注意が必要です。


調査にあたっては、もちろん会社独自でも対応は可能ですが、健康保険法、厚生年金保険法など社会保険法規に関する専門知識が必要なのはもちろんですが、他の法律と異なり社会保険法規の場合、実態に基づいた実際の実務に精通していないと、調査後の対応において会社の経営を揺るがすほどのダメージを受けることもあるので、細心の注意が必要といえます。

年金事務所による調査の種類は主に次のようなものがあります。

1.社会保険加入時(新規適用)調査

2.算定基礎調査

3.総合調査

4.会計検査院調査

実際に年金事務所による調査が行われることになった場合、どのようなことになるのか、何か特別な対応が必要なのか不安に思われる経営者の方も大勢いらっしゃるかと思います。そもそも、年金事務所の調査は、どういう場合に行われるのでしょうか?

調査自体の傾向を大雑把に分類すると、年間を通じての定期的な事務手続きが適正に行われているかどうかを確認するために行わる場合と、社会保険に加入している会社で年金受給者がいたり、パートスタッフが多くいたりする場合に行われるケースの2つに大別されます。


前者の場合、特に会社で問題が発生していなくても調査の対象になる可能性があり、調査の結果健康保険法や厚生年金保険法等の法律に違反する事項があったり、法律違反はしていなくても改善したほうが望ましい点がある場合には行政指導が行われます。
後者の場合も同様、違反事項や改善事項があれば行政指導が行われるわけですが、ともに共通する注意点として、調査の結果、社会保険料の追加負担が発生したり、年金の返還が必要になったりする場合があるという点です。

いずれの場合にせよ、年金事務所の調査を労務管理上の問題点解消のための機会の一つと考えれば、必要以上に不安を感じることはなく、むしろ労働条件を改善し、優秀な人材の定着につなげるための機会の一つと捉えて頂くことの方が健全な考え方だと思います。

しかしながら、社会保険法規に則った労務管理上の問題点を解消するには、企業独自で対応するのが難しいケースも少なくありません。こうした場合には、社会保険法規と実務に精通した専門家集団である社会保険労務士事務所と協力しながら問題点の解消に向けた対応をしていくことをお勧めいたします。

年金事務所対応事例

<サービス業>年金事務所の総合調査への対応-1 お客様を通じてのご紹介により、年金事務所の調査があるため、加入状況等に問題点がないかどうか心配なので相談にのっていただけないか、とのご依頼でした。調査の内容としては、[・・・]