「アウティング」というパワハラを知る(社会保険労務士法人SOUMUニュースレター2021年1月号)

1月度、本年最初のニュースレターになります。

今月号は、「アウティング」という新たなパワハラの一つについての特集をしています。
アウティングとは、「好きになる相手の性別(性的指向)」や、自分の認識する性別(性自認)を本人の了解なく第三者に暴露すること」を指します。
このアウティングという新たなハラスメントについて、悲しい事件がありました。概要としては、ゲイであることを同級生に暴露(アウティング)された大学生が、そのことに対するショックから心身に変調をきたし大学の建物から転落死したという事件です(一橋大学アウティング事件)。事件後、遺族が大学側に損害賠償などを求め訴訟を起こし裁判は控訴審まで進みましたが、結果は一審・二審とも遺族側の請求が棄却されました。しかしながら、判決理由の中でアウティングについて触れ、「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らか」とされ、アウティングの違法性について日本で初めて法的見解が述べられました。
近年は労務管理上、従来のセクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)に加え、マタニティーハラスメント(マタハラ)、パタニティーハラスメント(パタハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)等様々なハラスメントの防止に留意することが企業経営上の重要課題の一つとなってきています。

特にパワーハラスメントに関しては、大企業では2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から改正労働施策総合推進法「通称:パワハラ防止法」の施行により、企業規模を問わずパワハラの防止が法律で義務付けられることになるため、的確な対応が望まれます。

参考までに、厚生労働省発表のパワハラ防止のための具体的措置内容を下記に掲載いたします。

◆ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、
労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、
労働者に周知・啓発すること
◆ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
◆ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
➄ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
(注1)事実確認ができた場合 (注2) 事実確認ができなかった場合も同様
◆ そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、
その旨労働者に周知すること
(注3) 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、
労働者に周知・啓発すること

上記内容を踏まえた実務上の具体的な対策としては、管理者層を中心にパワハラに関する勉強会の実施やセミナー受講の他、就業規則を変更し新たにハラスメント禁止条項を設けたり、ハラスメント防止規程というような形で専用の規程を設けたりすることが必要となります。

 

こちらの特集の他、顧問先の皆様には完全版でお届けをさせていただいております。

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL