給与の「デジタル払い」を考える(社会保険労務士法人SOUMUニュースレター2021年3月号)

3月度のニュースレターになります。

今月号は、給与のデジタル払いについての特集をしています。皆さんの会社では、どのように給与の支払い(受け取り)をされていますか?

おそらく最も一般的なのは、銀行等の金融機関への振込により行う方法なのかと思います。ところで、給与の支払いに関しては法律で細かく要件が定められていることをご存知でしょうか?

今月の特集、給与の「デジタル払い」を考察するにあたり、ここで一度給与の支払いに関する法律上の決まり事についておさらいしてみたいと思います。

法律(労働基準法)上、給与は「賃金」と呼ばれ、定義の他支払い方法等について原則が5つ定められています。

まず賃金の定義については、労働基準法第11条で「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」とされています。

ここで重要なのは、名称の如何を問わず労働の対償(”対象”ではありません)として支払うすべてのものが賃金になるということです。会社によって職務手当とか技術手当、通信手当など様々な呼称の手当がありますが、労働の対償であればこれらの手当はすべて賃金になる、ということです。

次に支払い方法等についてですが、こちらは労働基準法第24条第1項で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、・・・・・以下略」とあり、同条第2項で「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りではない。」と定義されています。

重要な点を要約しますと、①通貨で、②直接労働者に、③その全額を、④毎月一回以上、⑤一定の期日を定めて支払う必要がある、ということになります。一般的にこれらを総称し賃金支払いの五原則といい、正社員は勿論、パート、アルバイト、契約社員など契約形態を問わず全ての労働者に対する支払い時に適用されるので、注意が必要です。

今月の特集で取り上げた給与の「デジタル払い」は、通貨払いの例外措置にあたることになりますが、原則の現金払い以外で一般的に採用されている方法としては、銀行などの金融機関への振込払いがほとんどだと思います。また、銀行への振込払い選択する場合でも、「本人の同意」が法律上は必要なため(労働基準法第24条施行規則第7条の2)給与支払い手続きは、いかに規制が厳しいかが垣間見えます。

デジタル払いの具体的な内容としては、PayPay(ペイペイ)、LINE Payなどのスマホ決済サービスを提供している資金移動業者の口座への送金を認めようというものです。スマートフォンの普及にともない、少しずつですが日本でもキャッシュレス化が進んでいるようですが、海外と比較すると遅れている感は否めないと思います。

多額の現金を持ち歩く必要がなかったり、ポイントが貯まったりとキャッシュレス決済ならではの利点も少なくないため、選択肢の一つとして広く普及することを個人的には望みます。

こちらの特集の他、顧問先の皆様には完全版でお届けをさせていただいております。

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